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 しょうなんでんしゃ のブログ
 1/80くらいの鉄道模型の工作
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エジンバラ液の寿命
 エジンバラエッチング液の寿命について質問があったので、一つの参考例としてプレートのエッチング結果を挙げる。

腐食液の寿命01

・真鍮板 : t 0.5、40 mm×200 mm
・腐食の深さ : 片面を約0.2 mm彫り込む。(腐食前後の真鍮板の質量を計っておけばよかったと悔やまれる)
・腐食液 : 塩化第二鉄溶液(原液)100 mL(=144 gに相当)
・キレート剤 : クエン酸 30 g
・加温 : 50 ℃ 程度
・腐食時間 : 50分間

 このエッチングで使用済みとなった腐食液(すでにエッチング能力は無い)と、未使用の腐食液の色を比較した。未使用の腐食液も真っ黒、使用済みの液も青緑色の銅イオンのために真っ黒で、大変判りづらい。そこで両者を水で3倍に希釈して、万能pH試験紙のを参考に比較した結果、 「未使用=4に近い橙色(上写真)、使用済み=7に近い黄緑色(下写真)」となった。
※1 あくまでも色の比較であり実際のpHとは無関係である。塩化第二鉄の腐食液はpH1~2の強酸性である。
※2 比色法は透視する奥行きで色の濃さが変わるため、必ず同じ奥行きの容器(セル)を用いる。
腐食液の寿命02

腐食液の寿命03

 「酸化力のあるFe3+=橙色(さらに薄めると黄色)、酸化力の無いFe2+=ほぼ無色、溶け出たCu2+=青緑色」、これらが混ざり合っているので、我々素人たるモデラーが腐食液の寿命を正確に見極めるのは非常に困難である。毎回比色しなくても、途中で腐食状況を確認する時など、洗液の色が黄緑色を帯びてきたら腐食力も落ちたと考えた方がよい。50×50のグリルを抜いた時に100 mLのエジンバラ液を3回使い回せたのは、実際の腐食面積が小さかったからだと考えた。
 その後、反応のスケールを30 mLに落としたのは、腐食液の条件設定を毎回揃えるため以外にも、50×50の真鍮板が十分に沈む液量であることや、先に100 mLで3回腐食が出来たからである。

 「モッタイナイから…」と腐食液を再利用して、万一エッチング不足で失敗した日には、「500mL=400円の腐食液をケチれば良かった…」と思うのか、「原稿作りからトナー転写まで手間のかかるワークをケチれば良かった…」と思うのか、どちらで後悔すべきかは明白だ。
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LED DrawingBoard
 両面エッチングの強い味方の登場である。

 両面エッチングは鏡像のトナー原稿を表裏から定着させる。表裏がズレないよう位置決め用のトンボを描くのが一般的だが、筆者はエッチングパターンを合わせて済ませる事が多い。印刷したトナー原稿を窓ガラスで透かしながら位置決めしていた。しかしこれでは昼間しか作業ができない。ネガ確認用のライトボックスを持っていれば良かったが、ほとんど写真を撮らないし自分で現像もしない。

 F式エッチングを始めてから「やっぱりライトボックスが欲しいなぁ…」と思いながら時々ネットを探してた。蛍光灯を使った厚みのある形しか頭になかったが、LEDトレース台という商品をイラスト・コミックのカテゴリーで見つけた。もはやBoxという形状ではない。

 近年の技術の進歩には驚かされてばかりだ。LED光源なので極めて薄く、電源も5 Vモバイルバッテリーが使えてしまう。
おまけに電源ボタンの操作だけで無段階に光量を調節できる。
LEDライトbox01

 初めは背景のドット模様が気になっていたが、実際に使ってみるとそれほど気にならない。
LEDライトbox02


 イラスト・コミック用のためA3サイズもあったが、さすがに必要ない。チマチマしたエッチングパーツを作るにはA4サイズでも大きすぎるくらいだ。これならiPadやTabletの「白い壁紙」でも充分に役立つだろう!あいにく筆者は持ってないが。

 え?はがきサイズのトレース台も出てるって!?
オキシドール エッチング(2)
 過酸化水素の分解は発熱反応であるため、反応が進むと勝手に液温が上がる。

 そのため、加温はエッチング開始時に少し行っただけだ。
オキシドールクエン酸塩03

 液温を上げ過ぎると目がチカチカしてくるので要注意。

 銅や真鍮など金属表面では微細な泡が生じている。
オキシドールクエン酸塩04

 周囲をセロハンテープでマスキングしているがそこにも気泡が見える。これが過酸化水素の分解反応で生じた酸素(O2)ならば、これらは反応にあずからず大気中に逃げていくだけだ。無駄に過酸化水素が消費されていることになる。

 以前の塩化第二鉄溶液を使ったエッチングでは黒いモヤモヤ(四酸化三鉄:Fe3O4、四三酸化鉄とも)が生じる。おまけに元々の塩化第二鉄溶液も褐色のため、エッチング中は反応液が真っ黒になってしまい進捗状況が判りづらい。


 このオキシドール+クエン酸エッチングでは一般的に腐食液の処方は『クエン酸4塩1(しお:塩化ナトリウム、食塩で代用)、そこにオキシドール(3%過酸化水素水)を加えて溶解せしめる』とされている。どれも百均で揃ってしまうのが嬉しい。何より反応液も透明なので進捗状況が判る点も好都合だ。

 ※ 筆者が実際に行った比率は、オキシドール(80 mL) + クエン酸(10 g) + 食塩(10g) であった。 クエン酸に対して食塩が過剰だが下記の理由で問題ない。


 さて、「クエン酸4+塩1」、どこを見てもこの比率だ。おそらくモル比を約1:1としたかったのだろうと筆者は解釈している。
 クエン酸(Citric acid)には無水物(C6H8O7=192.12g/mol)と一水和物(C6H8O7・H2O=210.14g/mol)がある。仮に一水和物として計算してみる。塩化ナトリウム(Sodium chloride)は、NaCl=58.44g/molなので同じ物質量の場合「クエン酸一水和物:塩化ナトリウム=210.14:58.44≒3.6:1」、すなわち約4:1となった。ちなみにクエン酸が無水物の場合は192.12:58.44≒3.3:1であり、4:1とかなり違うが大きな障碍にはならない。

 多くの場合、純粋な塩化ナトリウムの代用品として「食塩」を使うであろう。Cl-とNa+の他にも硫酸イオン(SO42-)、炭酸イオン(CO32-)、カリウム(K+)やマグネシウム(Mg2+)、カルシウム(Ca2+)などミネラル成分が含まれている。(※1)

 ところで、「クエン酸はエジンバラエッチでもキレート剤として働くが、何で塩(塩化ナトリウム)が必要なの?」という疑問が生じると思う。筆者は応用化学を出たわけでもなくエッチングの専門家でもないので正解は不明だが、おそらく塩化物イオン(Cl-)を供給するためではないかと考えている。工業的には「硫酸-過酸化水素」という組み合わせばかりだが、「塩酸-過酸化水素」でも銅を溶かすことができる。その場合、金属の銅を銅イオンにするための酸化剤が過酸化水素であり、酸化された銅イオンを溶かし出すための配位子が塩化物イオン(Cl-)となる。
 今回の「オキシドール+クエン酸+塩」の組み合わせでも、銅(と亜鉛)が過酸化水素により酸化され、塩化物イオンの働きで溶け出し、クエン酸と配位子交換することで比較的安定なキレートを形成するのではないかと考えている。初めからクエン酸が配位しないのは・・・分子が大きいから?

 「そんなに上手いこと行くの?」

 なんて言われそうだが、実際にやってみて真鍮板が溶けたのは事実なのだ。

<箸休め>
※1 あの伯方の塩が、瀬戸内海の海水ではないことに驚いた。てっきり伯方島の塩田で作られていると思っていた。 欧州の岩塩は有名だが、北米でも採掘するのだろうか?アメリカと世界の塩事情(1983年)によると内陸でも岩塩は少なそうだ。ユタ州のSalt Lakeは判りやすいが、カンザス州のド真ん中で製塩が盛んなのは何故?
 海外では食塩にヨウ素を添加したヨード添加塩が必要となる場合もあるが、日本国内では不要だ。ちなみに千葉はヨウ素の世界的産出地である。天然ガスとともにヨウ素を含んだ水が汲み上げられ精製されている。地学の巡検の折、茂原市のヨウ素工場を見学した。そのとき初めてヨウ素の単体(I2を見た。紫色で美しい金属光沢であった。
オキシドール エッチング(1)
<オキシドール-クエン酸-食塩 エッチング>

 塩化第二鉄溶液を使ったエッチングの他にオキシドールエッチングがある。これも自作プリント基板では有名な手法である。

 大物のプレート制作をすると結構な量の塩化第二鉄が消費される。廃液処理も面倒だが、ワークや器具を洗浄すると知らぬ間に洗液が跳ねて、あとで赤い鉄サビがあちこちに生じるのが嫌だった。


 材料はt 0.5の真鍮板。F式なのでレジスト(防蝕膜)はトナー、ベース紙はダイソーの光沢紙を使い、ナフサ洗浄後にアイロンで熱転写した。裏面はセロハンテープでマスキングしておいた。腐食面積は多く見積もって30 mm × 190 mm、深さは0.2 mmを目標とした。

 反応容器(プラのタッパーなど)にクエン酸と食塩を取り、オキシドールを加えて腐食液を調製した。

 Rp) Citric Acid ( 5 g )
    NaCl ( 5 g )
    3% H2O2 ( 40 mL )
 --------------------

 40-50℃に加温した腐食液に真鍮板を浸け、やさしく揺らして撹拌した。最初は無色透明な腐食液だがエッチングの進行とともに銅(と亜鉛)が溶け出し、徐々に青緑色が濃くなってくる。
オキシドールクエン酸塩01

 加温を続けると微細な泡や大きな泡が生じる。
オキシドールクエン酸塩02

 発泡が止まったので腐食具合を確認したが、まだ彫りが浅かった。同量の腐食液を調整・追加した。

 結果はこんな感じである。
オキシドールクエン酸塩05

 塩化第二鉄(エジンバラ液)を使うと腐食面は滑らかなものの、全体的に赤く変色してしまう。

 逆にオキシドールでは腐食面が梨地になるものの、キレイな真鍮色のままだ。

(つづく)
トナーのワックスを洗い流す
≪ トナーのワックスを洗い流す ≫


1.概 略

・F式エッチング法おいてレジストとして使われるトナーには、ワックス成分が含まれている。
・トナー原稿を印刷後、ワックス成分がトナー表面に残っていることを知った。
・ワックス層を除去すればトナーの定着力(ぬれ)が向上し、エッチング不良を防げるのではないかと考えた。
・トナー原稿の段階でワックス層を洗い流すことによりエッチング不良を改善することに成功した。


2.はじめに

 F式エッチング法(以下、F式と略す)が2006年に暫定公開されて以来、自作プリント基板や簡単なプレート類から細密な模型部品にまで活用され、自家エッチングの汎用性は大幅に広げられた。最大の特徴はレーザープリンター(またはコピー機)のトナーをエッチングのレジスト(銅版画ではグランド:防蝕剤)に利用した点と、ベース紙に印刷したトナー原稿をアイロン(またはラミネーター)で金属板に熱転写する点であろう。

 一方で手軽に出来る分、失敗することも多々ある。F式の公開後、多くのアマチュア研究家たちが最良な方法を求めて様々な試行錯誤を繰り返している。
 オリジナルのF式ではベース紙にフジフィルムの画彩(通称“ぶどう”)が選ばれていたが、それが廃版になった今、新たなベース紙を探し求める研究家も多い。そこを狙ってなのか自作プリント基板用として2種類のベース紙が市販されている。
1)黄色で廉価な「 aitendo パターン転写シート 」は、入手したものの残念ながら表面(印刷面)の粗さが目立つ。
2)青色で高価な「 Techniks Press-n-Peel Blue Transfer Film 」は鹿ヶ谷軽便鉄道の吉岡氏がトナー転写基盤のページで紹介されていたが、氏も結局は価格(入手性も?)の面で最終的に普通紙で制作されていた。


 筆者はWEBで良しとされたダイソーの光沢紙を使い、比較的大きな物にはある程度の結果を得たが細密エッチングには向かなかった
 熱転写についても、ラミネーターに何回も通す方法もあればアイロンで加熱・加圧する方法もある。ラミネーターを使えば毎回同じ条件で熱転写が行える。アイロンを使えば加圧力を調節できることや1輌分のナンバープレートだけなど小物でも扱いやすい。

 このように様々なベース紙や熱転写の方法が検討されているにも関わらず、F式エッチングで失敗するのは何故か?


3.本 論

 筆者も切り抜きナンバーのエッチングで良い結果を出せずにいた。エッチングの途中でトナーが剥がれてしまうのだ。自家エッチングについてdda40x氏と意見交換したとき「金属板に対するトナーの“ぬれ”が良くない」と述べられた。
 そんな折、手当たり次第にトナーについて検索していると「トナー用高純度エステルワックス」(※PDFファイル)という研究報告を目にした。その中の模式図を見て驚き、そして確信した。
「“ぬれ”を低下させているのはトナーに含まれるワックス成分である!」

 ザックリ言うと、トナーとは樹脂と顔料とワックスが結合した微粉末である。印刷の仕組みは感光ドラムに付着したトナーがコピー紙に転写され、ヒートローラーの加圧と加熱で融かされてコピー紙に定着する。最後のヒートローラーに巻き付かないのは、トナーが加熱されてワックス成分が融け出すとローラーとの間で“離型剤”として働くからである。

 ベース紙に印刷されたトナー原稿はワックス層がトナーの表面に向いた状態となる。F式の問題点はそこにあった。ワックス層(=離型剤)を金属板に向けて加圧・加熱していることになる。

 つまりトナー原稿を使うF式は必然的にワックスに邪魔されているのだ。

 それではトナー原稿の表面にあるワックスを除去すれば良いのではないか?

ナフサ洗浄


4.方 法
 トナーの樹脂成分は主にアクリル樹脂、ワックスの正確な成分は不明だが極性の低い(=脂溶性が高い)物質だと考えた。ベース紙や樹脂を溶かさずワックスのみを溶解せしめる溶剤として安物のライターオイルを使ってみた。ライターオイルの成分は石油精製ナフサ(C5~C10程度)である。揮発性が高くて危なっかしいので使わずにいた。お得意のベンジン(n-ヘキサン)でも良いが、さらに炭素数の多い灯油では揮発性が劣るのとニオイが臭すぎるので好きではない。

 印刷したトナー原稿にナフサを掛け流してワックス層を洗い流す。瓶に入れたナフサにトナー原稿を漬けても溶けたワックスが薄く拡がるだけである。
ナフサ洗浄01

 筆で多少こすってもトナーには影響がなかった。
ナフサ洗浄02


5.結 果

 先回に一番良い結果だったもの。
OERナンバー17
 エッチング中にトナーが剥がれてきたので、文字はまだ太いが引き上げてクエンチした。

 今回、トナー原稿をナフサで洗ったもの。
IMG_2234.jpg
 「何だ失敗じゃねーか」と思われるであろう。しかし筆者は驚いた。随分と痩せ細ってしまったが一文字も欠落せずに残っているのだ。すべての文字のトナー(=レジスト)が残っていたため引き上げが遅れてサイドエッチングが進行してしまった点が悔やまれる。(今後、良い結果が出たら画像を更新しようと思う。)

<2019/10/9、追記>
再度、ナフサ洗浄によるナンバーのF式エッチングを試みた。
(左:前回、右:今回)
IMG_2268.jpg
所々欠落したが概ね良好という印象だった。右上の「1」はトナー原稿の段階から欠けていた。サイドエッチングを恐れるあまり早めに引き上げてしまったが、前回より太く、無洗浄よりはスリムになった。

6.まとめ

・トナー原稿の表面にあるワックス層を除去することで、金属板へのトナーの定着力(ぬれ)が向上することが判った。
・ワックス層を除去する溶剤は無極性のナフサ(安物のライターオイル)で行えることが判った。
・トナーが剥がれにくいので、気付かぬうちにエッチングが進行し過ぎる点に注意する必要がある。


以上である。

もう少し条件を変えて検討したい・・・と言いたいところだが、それでは車輛の完成が遠のいてしまう。
誰かチャレンジしてみて欲しい、ライターオイルを掛けるだけなのだ、もちろん火気厳禁で。
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