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しょうなんでんしゃ のブログ
 1/80くらいの鉄道模型の工作
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3条ウォームギヤ(3)
3条ウォームの開発談には色々な必須条件が公開されている。
http://dda40x.blog.jp/archives/50371584.html

コアレスモーターを使うのはもちろんのこと、ウォームの形状や進み角、ウォームとホイールの材質、ギヤ比の選定、ベアリングの使い方、二硫化モリブデングリースを使うこと、などなど。

実際にサンプルを拝見して自分なりに一番勉強になった点は「ベアリングの使い方」であった。

「Free rolling drive」(2006年11月17日)または「Free to Roll Mechanism」(2016年02月25日)と名づけられた3条ウォームギヤシステムは、入力軸(モーター軸)からウォーム、ウォームホイール、出力軸(車軸)に至るまで、触れているのはベアリングのインナーレース(内輪)だけである。そして内輪はギヤボックスのどこにも接触していない。つまり入力軸に与えられたエネルギーは、損失なくウォームの伝達に使われるのだ。

HOサイズのギヤボックスでは入力軸が球状メタルで保持され、ワッシャーを介してウォームがある。おまけに前後にガタがあるので前進時と後進時の走り具合に差が出ることもある。さらにウォームホイールに付けられた車軸はダイカスト製のギヤボックスで直接支えられている物が多い。

ボールベアリングを使えばエネルギー損失が極めて少なく動かせる訳だが、使い方を誤ると何の意味もなくなる。このサンプルでは、ウォームもホイールも内輪以外に触れないよう、その端には段がつけられており、ギヤボックス側も内輪に触れないよう、その部分が僅かに彫り込まれている。
08-3条ウォーム (4)

ウォームは構造上スラスト方向(軸方向)に力が掛かる。氏のブログでも以前アップされていた3条ウォームにはスラスト・ベアリングが付けられていた。(2006年11月14日)

今回の物にはそれが無い。

「精度高く作れば、要らない・・・押されたときに拡がらないように、外側を支える部分を正確に作ってあれば良い」と述べられている。(2017年12月21日)

確かに入力側のベアリングはギヤボックスに直接組み付けられていない。その代りカップ状のハウジングにガタが無く収まっている。もちろん内輪はハウジングに接触していない。その隙間には油が満たされている。油膜で保持されているのだ。HOサイズに多い左右分割式の鋳造ギヤボックスは、軸受けを直に保持出来るほど精度が高くない。球状メタルですらキチンと嵌らず回転が渋いこともある。
08-3条ウォーム (3)

スムーズな逆駆動(=高効率)はここまでしないと得られない。
言い換えれば、これらを遵守すれば自ずと逆駆動(=高効率)となる。

残念なことに自分でウォームとウォームホイール、ギヤボックスを設計して「Free rolling drive」を得るには、時間も資金もアタマも足りない。

それ以前に、HOサイズでそれを実現したところで、キーキー鳴るような客貨車を牽いていたのでは何の意味もない。Low-d車輪に匹敵する低抵抗車輪が必要となる。筆者はピボット車輪の転がり改善にも関心がある。そこは市販の車輪を再整備すれば何とかなるであろう…という考えに、今は甘んじている。

3条ウォームの牽引機とLow-D車輪のトレーラーが揃った時こそ、その真価を最大限に発揮すると言えよう。C62単機牽引のつばめフル編成やEF58の20系フル編成、長大な石炭列車も夢ではない。

もちろん輪軸のイコライジングや連結器の柔軟な首振り、客貨車重量の均一化、線路の整備なども忘れてはならない。


これ以上、自分の人生の課題を増やしていては、結局どれも中途半端になりかねない。

3条ウォームをなめ回すように観察して、そのままそっとお返しした。

色々と刺激的な夏休みであった。

(おわり)
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コメント
コメント
記事を拝見して、HOサイズでFree rolling driveやLow-D車輪の効果がどう期待できるか考えました。
同スケールスピードでノッチオフし、同スケール長さを惰行する摩擦係数を比較します。
簡単のためOとHOの縮尺比を2:1とし体積比=質量比とします。すると運動エネルギー(1/2×質量×速度^2)は32:1です。
摩擦力を一定とすると、その比が16:1の時に惰行距離が2:1、つまり同スケール距離になります。(摩擦力×距離=失う運動エネルギー)
摩擦力÷重量(垂直抗力)は16/8:1=2:1になり、これが摩擦係数の比です。
つまりHOではOの半分の摩擦係数でないと見かけ上で同じ惰行ができません。
言い換えればLow-D車輪のHO版を作っても見かけの転がり性能は半分になってしまいます。
乱暴な概算ですが、小さなスケールほど惰行が効きません。大減速比では損失が増え、より厳しくなります。
以上より小スケール模型では力学的な方法のみによる実感的な走行は難しく、別の工夫が必要になると思われます。
2019/08/31(土) 01:22:04 | URL | Tavata #- [ 編集 ]
Tavataさま、
判りやすい解説、ありがとうございます。
ご指摘の通り、スケールが小さくなるほど慣性の寄与が少なくなることは明らかです。そして摩擦を減らすことはスケールを問わず必須条件ですね。
ウォームの逆駆動に興味が向いたのは慣性による“つんのめり防止”よりも、低抵抗車輪を含めた“静粛で滑らかな運転”を望んでいるからですが・・・あまりにも当たり前すぎて書けませんでした。
Low-d車輪の効果がOサイズの半分だとしても、今のHOサイズの走行環境に比べたら劇的な改善になると思っています。
2019/08/31(土) 01:36:28 | URL | むすこたかなし #- [ 編集 ]
3条では無く、2条のウォームギア(スパイクモデル製)を使用していますが、1/80位の模型でも少しだけ惰行します。
ちょっと集電不良があっても、惰性で動輪が回るので、走行はかなり安定します。
機関車を引っ張ると動輪が回るので、手での線路上の移動も便利です。
1/80クラスですと、Low-Dのような踏面形状の工夫よりも、ピボットの改善の方が走行抵抗に効くような気がしています。
当方は、Low-Dではないですが、踏面形状の検討はしているものの、これといった実績は出ていません。
2019/09/01(日) 23:13:48 | URL | 森井 義博 #- [ 編集 ]
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