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 しょうなんでんしゃ のブログ
 1/80くらいの鉄道模型の工作
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トナーのワックスを洗い流す
≪ トナーのワックスを洗い流す ≫


1.概 略

・F式エッチング法おいてレジストとして使われるトナーには、ワックス成分が含まれている。
・トナー原稿を印刷後、ワックス成分がトナー表面に残っていることを知った。
・ワックス層を除去すればトナーの定着力(ぬれ)が向上し、エッチング不良を防げるのではないかと考えた。
・トナー原稿の段階でワックス層を洗い流すことによりエッチング不良を改善することに成功した。


2.はじめに

 F式エッチング法(以下、F式と略す)が2006年に暫定公開されて以来、自作プリント基板や簡単なプレート類から細密な模型部品にまで活用され、自家エッチングの汎用性は大幅に広げられた。最大の特徴はレーザープリンター(またはコピー機)のトナーをエッチングのレジスト(銅版画ではグランド:防蝕剤)に利用した点と、ベース紙に印刷したトナー原稿をアイロン(またはラミネーター)で金属板に熱転写する点であろう。

 一方で手軽に出来る分、失敗することも多々ある。F式の公開後、多くのアマチュア研究家たちが最良な方法を求めて様々な試行錯誤を繰り返している。
 オリジナルのF式ではベース紙にフジフィルムの画彩(通称“ぶどう”)が選ばれていたが、それが廃版になった今、新たなベース紙を探し求める研究家も多い。そこを狙ってなのか自作プリント基板用として2種類のベース紙が市販されている。
1)黄色で廉価な「 aitendo パターン転写シート 」は、入手したものの残念ながら表面(印刷面)の粗さが目立つ。
2)青色で高価な「 Techniks Press-n-Peel Blue Transfer Film 」は鹿ヶ谷軽便鉄道の吉岡氏がトナー転写基盤のページで紹介されていたが、氏も結局は価格(入手性も?)の面で最終的に普通紙で制作されていた。


 筆者はWEBで良しとされたダイソーの光沢紙を使い、比較的大きな物にはある程度の結果を得たが細密エッチングには向かなかった
 熱転写についても、ラミネーターに何回も通す方法もあればアイロンで加熱・加圧する方法もある。ラミネーターを使えば毎回同じ条件で熱転写が行える。アイロンを使えば加圧力を調節できることや1輌分のナンバープレートだけなど小物でも扱いやすい。

 このように様々なベース紙や熱転写の方法が検討されているにも関わらず、F式エッチングで失敗するのは何故か?


3.本 論

 筆者も切り抜きナンバーのエッチングで良い結果を出せずにいた。エッチングの途中でトナーが剥がれてしまうのだ。自家エッチングについてdda40x氏と意見交換したとき「金属板に対するトナーの“ぬれ”が良くない」と述べられた。
 そんな折、手当たり次第にトナーについて検索していると「トナー用高純度エステルワックス」(※PDFファイル)という研究報告を目にした。その中の模式図を見て驚き、そして確信した。
「“ぬれ”を低下させているのはトナーに含まれるワックス成分である!」

 ザックリ言うと、トナーとは樹脂と顔料とワックスが結合した微粉末である。印刷の仕組みは感光ドラムに付着したトナーがコピー紙に転写され、ヒートローラーの加圧と加熱で融かされてコピー紙に定着する。最後のヒートローラーに巻き付かないのは、トナーが加熱されてワックス成分が融け出すとローラーとの間で“離型剤”として働くからである。

 ベース紙に印刷されたトナー原稿はワックス層がトナーの表面に向いた状態となる。F式の問題点はそこにあった。ワックス層(=離型剤)を金属板に向けて加圧・加熱していることになる。

 つまりトナー原稿を使うF式は必然的にワックスに邪魔されているのだ。

 それではトナー原稿の表面にあるワックスを除去すれば良いのではないか?

ナフサ洗浄


4.方 法
 トナーの樹脂成分は主にアクリル樹脂、ワックスの正確な成分は不明だが極性の低い(=脂溶性が高い)物質だと考えた。ベース紙や樹脂を溶かさずワックスのみを溶解せしめる溶剤として安物のライターオイルを使ってみた。ライターオイルの成分は石油精製ナフサ(C5~C10程度)である。揮発性が高くて危なっかしいので使わずにいた。お得意のベンジン(n-ヘキサン)でも良いが、さらに炭素数の多い灯油では揮発性が劣るのとニオイが臭すぎるので好きではない。

 印刷したトナー原稿にナフサを掛け流してワックス層を洗い流す。瓶に入れたナフサにトナー原稿を漬けても溶けたワックスが薄く拡がるだけである。筆で多少こすってもトナーには影響がなかった。


5.結 果

 先回に一番良い結果だったもの。
OERナンバー17
 エッチング中にトナーが剥がれてきたので、文字はまだ太いが引き上げてクエンチした。

 今回、トナー原稿をナフサで洗ったもの。
IMG_2234.jpg
 「何だ失敗じゃねーか」と思われるであろう。しかし筆者は驚いた。随分と痩せ細ってしまったが一文字も欠落せずに残っているのだ。すべての文字のトナー(=レジスト)が残っていたため引き上げが遅れてサイドエッチングが進行してしまった点が悔やまれる。(今後、良い結果が出たら画像を更新しようと思う。)

<2019/10/9、追記>
再度、ナフサ洗浄によるナンバーのF式エッチングを試みた。
(左:前回、右:今回)
IMG_2268.jpg
所々欠落したが概ね良好という印象だった。右上の「1」はトナー原稿の段階から欠けていた。サイドエッチングを恐れるあまり早めに引き上げてしまったが、前回より太く、無洗浄よりはスリムになった。

6.まとめ

・トナー原稿の表面にあるワックス層を除去することで、金属板へのトナーの定着力(ぬれ)が向上することが判った。
・ワックス層を除去する溶剤は無極性のナフサ(安物のライターオイル)で行えることが判った。
・トナーが剥がれにくいので、気付かぬうちにエッチングが進行し過ぎる点に注意する必要がある。


以上である。

もう少し条件を変えて検討したい・・・と言いたいところだが、それでは車輛の完成が遠のいてしまう。
誰かチャレンジしてみて欲しい、ライターオイルを掛けるだけなのだ、もちろん火気厳禁で。
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コメント
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F式エッチングのトナー
F式エッチングですが、プリンタ-メーカーによってトナーの融点が違うので、向き不向きがあると聞きました。キャノンは融点が低いので適しているが、ブラザーは融点が高いのでF式には向かないとききました。実際そのとおりだったので、F式用にキャノンの型落ちレーザー購入して使っています。ワックスもプリンターメーカーで違うのでしょうか?
2019/10/09(水) 22:12:31 | URL | ゆうえん・こうじ #64owOXpE [ 編集 ]
Re: F式エッチングのトナー
ゆうえんさま、コメント有難うございます。
トナー用のワックスは各社で異なると私は考えています。しかし、結局その働きはヒートローラーからの“離型”ですから、化学的性質はどれも似ている筈だと思っています。各社エステルやらアルコールやらの違いはあるものの、長い炭素鎖(=脂溶性部分)を必要としているようです。どのワックスにも脂溶性(無極性)部分があるとしたら、それに合った無極性の溶剤で洗浄できるというのが現在の推察です。

仰る通りメーカーごとにトナーの融点(ガラス転移点)は違うようですが、近年は各社とも融点(ガラス転移点)を下げる傾向にあるようです。予熱を含めた省エネ(エコロジーブーム?)対策とも謳っています。
例えば、
・京セラの新トナー
 https://www.kyoceradocumentsolutions.co.jp/products/concept/new_toner/
・FUJIXeroxのEA-Ecoトナー
 https://www.fujixerox.co.jp/company/news/release/2007/1225_eatoner.html

また、我々が使うF式すなわち“一度印刷したトナーを金属板へ再転写する”という行為は、メーカー側としても想定外な使われ方でしょう。メーカーはより良い方法・結果(そしてコスト)を目指して日々研究開発をしている筈です。トナーが「樹脂・顔料・ワックス」から構成されることを考えれば、定着温度の低下に貢献する“樹脂の低融点化”以外にも、今や当たり前となったカラー印刷のための“顔料”や、ヒートローラーからの脱離を容易せしめる“ワックス”は印刷品質の向上につながると考えられます。
例:中京油脂のトナー用ワックス(←「離型」と思いっきり記述されていますね)
 http://www.chukyo-yushi.co.jp/jp/product/production/post_1.html

さらには、トナーの開発と並んで各種ローラーも研究開発がされている筈です。より高解像度に対応した感光ローラーや、低温用のヒートローラーなどなど。ゆえにトナー(=インク)とローラー(=印刷の版)は対(つい)として考えられるべきものです。

そこまでしてメーカー各社はレーザープリンターを研究開発しているのですから、それを利用させてもらうF式自家エッチングは今後も「トライアル&エラー」の連続でしょう。
2019/10/10(木) 01:59:15 | URL | むすこたかなし #- [ 編集 ]
ワックスは加熱すれば蒸発しないでしょうか?
むすこたかなしさま
くわしい解説ありがとうございます。
ところでワックス加熱すれば蒸発してとんでしまうということはないのでしょうか?具体的には、F式でトナー転写した板をオーブンで焼くとかバーナーで炙ればトナー飛んでしまわないでしょうか?
疑問に思うならdda40x氏がいわれるように、自分で実験すべきなんでしょうね。
2019/10/10(木) 19:33:50 | URL | ゆうえん・こうじ #64owOXpE [ 編集 ]
Re: ワックスは加熱すれば蒸発しないでしょうか?
> ところでワックス加熱すれば蒸発してとんでしまうということはないのでしょうか?具体的には、F式でトナー転写した板をオーブンで焼くとかバーナーで炙ればトナー飛んでしまわないでしょうか?

残念ながら、私は望み薄だと思います。

樹脂成分の省エネ(低融点化)に伴ってより融点の低いワックスが求められているそうですが、それを加熱して蒸発させるのは難しいと考えます。
三井化学(下記URL)においてもワックスの特性に「耐熱性、熱安定性」があるように、ワックスは比較的熱に強い物質です。
https://www.mitsuichem.com/jp/service/packaging/coatings/hi-wax/index.htm
ワックスを蒸発(気化)させるとなると、身近なところではロウソクやロストワックス製法が思いつきます。
ご存知のようにロウソクの炎の温度は約800℃ですが、それよりチョイ低めの700℃あたりでロウが気化するそうです。(燃焼の化学 ろうそくの炎の温度より)
http://katakago.sakura.ne.jp/chem/fire/rou_ondo.html
また、ロストワックス製法においてロウが溶け出す“脱ロウ”後の気化・燃焼は750℃とのことです。(吉田キャスト 鋳型の焼成より)
https://www.yoshidacast.com/process/burn-out/

一方、トナー用の樹脂成分は主にポリスチレンやアクリルです。どちらも融点(ガラス転移点Tg)は120~300℃程度ですが、連続耐熱温度は100℃そこそこしかありません。(プラスチック物性一覧表 (熱可塑性)より※PDFファイル)
https://kayo-corp.co.jp/common/pdf/pla_propertylist01.pdf

勝手な想像ですが、トナー転写後の金属板をワックスが気化するまで加熱したら・・・「熱い半田ゴテにプラスチックが触れたときのイヤ~な臭い」が思い出されます。つまり先にトナーがダメになる可能性が高いと私は思います。
2019/10/10(木) 20:42:21 | URL | むすこたかなし #- [ 編集 ]
トナー自体がカーボンの微粉末だと思っていましたので、吹きつけ黒染のトピカやスプレーラッセンのように焼き付け塗装?が可能かと思っていました。メインは樹脂粉末で添加剤もたくさんはいっているのですね。勉強になりました。
2019/10/11(金) 09:43:13 | URL | ゆうえん・こうじ #64owOXpE [ 編集 ]
トナの種類
 知り合いにトナを作っている人が複数いますので、ある程度のことは把握しています。結論を言いますと、「すべて異なる」です。
 言えることは、どのワックスもライタ・オイル程度の炭化水素には溶けます。ある会社のものはやや溶けにくいのですが、その成分は〇ス△ルの鎖が長いからです。このあたりのことは各社の企業秘密に属することで、ここで書くのは憚られます。
Z社のものは溶け易いので、この仕事には向きます。
2019/10/11(金) 19:44:51 | URL | dda40x #- [ 編集 ]
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