前回はHO用Low-D車輪の性能試験を行った。
KTM-エンドウ車輪よりも明らかに転がりが良く、日光車輪と同程度かやや上であるという印象だった。
線路は相変わらずKATOのユニトラックを用いたが、HOゲージ程度の鉄道模型では新品のレールでも頭頂部に細かな凹凸があるものが多い。。製造時に付くものということだろう。またユニトラックは走行音がうるさいと感じている方も多いと思う。薄いプラ道床と相まって、レールの細かな凹凸もその原因であろう。
さて、前回は図面のシルエットしか見せられなかった。外観はこんな感じである。
(下写真はOゲージ用Low-D車輪との比較)

アップで見ると踏面の粗さはOゲージ用と同程度であることが判る。ピカピカのメッキ車輪に比べ落ち着いて見えるのは、踏面が鏡面反射していないためだ。

ここで少し考えた。
「鏡面反射しないということは、表面には極めて微細な旋削痕が残っているためだ。これはこれで落ち着いて見えて好ましい。しかし車重の差を考慮しても、整備されたOゲージのレールでは良いが、ユニトラックのような細かな凹凸のあるレールでは極微細な旋削痕も走行抵抗になり得るのではないか? だとしたら踏面とフランジを研磨すれば走行抵抗をさらに減弱できるのではないか?」
走行音の差まで調べる環境にはないので、今回は「踏面とフランジを研磨したら走行抵抗を減弱できるか」を調べてみた。
当初は液体金属磨きのピカールを使って踏面とフランジを磨いてみた。一応磨けるのだが、いかんせん灯油臭く、布等にすぐ吸収されてしまい効率が悪い。また車輪側面まで研磨されてしまい、メッキ車輪と見た目の差が無くなってしまう。そこでステンレス用の研磨布を使ってみた。また、小さな車輪を保持していると指にマメができたので、旋盤を低速回転で使うことにした。
小さめに切った研磨布を、端をクサビ状に切った割り箸に巻き、チャックの回転に注意しながら車輪踏面とフランジ(特にフィレット部分)に当てた。つや消し状の車輪がみるみるピカピカに輝き、研磨布は黒ずんできた。車輪側面には当てていない。研磨布には研磨剤とワックスが含まれているので、研磨後にティッシュペーパーで拭い落とした。

これなら研磨布の当たる範囲が狭く、使う場所もコントロールできるので研磨布を有効に使える。
(左:研磨前、右:研磨後。下の汚い布は使用後の研磨布)

アップで見る。

「なんだ、いくらLow-D車輪の踏面が滑らかだと言っても、ツヤが無いということはやはりデコボコしてるということじゃないか。いくら磨いたとしても元がデコボコなら市販のメッキ車輪と大して変わらんな…」と思われた方は、以下の写真を見て戴きたい。
・HO用Low-D車輪(未研磨)

・HO用Low-D車輪(踏面・フランジを研磨)

・日光車輪

・KTM・エンドウ車輪

今回の車輪の滑らかさが、何となく御理解戴けよう。
最後に、未研磨のHO用Low-D車輪と比べてどれだけ滑走距離が延びるか(=走行抵抗を減らせるか)を、前回同様KTMの20系客車と5%直線勾配からR610の円を用いて調べてみた。ちなみに室内灯とプラ製床下器具を外した状態で車重はナシ20=202 g、ナハネフ23=205 gであった。
研磨後のHO用Low-D車輪は未研磨の車輪を抜き、R610をほぼ一周した。これはKTM車輪の倍近い。未研磨の車輪が前回の3/4周に僅かに届かなかったのは、台車やボルスタの個体差の範疇と考えている。それでも十分に滑走していることには変わらない。
∴‥∵‥∴‥∵‥∴‥∴‥∵‥∴‥∵‥∴‥∴‥∵‥∴‥∵‥∴‥∴‥∵
< 2021-08-18 追記 >
先端角とタイヤの止め方について質問があったので、車輪の略図を示す。

ピボット先端角は日光車輪を参考に40度とした。車軸にはタイヤを止めるフランジがあり、これでタイヤの振れを抑えている。この辺りは日光車輪と同じ(非絶縁側)だが、車軸中間部分はφ2に細くしてある(日光車輪はφ2.4のずん胴)。絶縁側には樹脂製のフランジ付きブッシュ(赤色)を噛ませている(日光車輪は輪芯に太い絶縁材が嵌め込まれている)。車軸にフランジがあるので日光車輪同様いわゆる“コンコン改軌”は出来ない。輪芯部分の肉抜きは最上段の写真のようにOゲージのLow-D車輪とほぼ相似形である。表裏の肉抜きのお陰で驚くほど軽い。
KTM-エンドウ車輪よりも明らかに転がりが良く、日光車輪と同程度かやや上であるという印象だった。
線路は相変わらずKATOのユニトラックを用いたが、HOゲージ程度の鉄道模型では新品のレールでも頭頂部に細かな凹凸があるものが多い。。製造時に付くものということだろう。またユニトラックは走行音がうるさいと感じている方も多いと思う。薄いプラ道床と相まって、レールの細かな凹凸もその原因であろう。
さて、前回は図面のシルエットしか見せられなかった。外観はこんな感じである。
(下写真はOゲージ用Low-D車輪との比較)

アップで見ると踏面の粗さはOゲージ用と同程度であることが判る。ピカピカのメッキ車輪に比べ落ち着いて見えるのは、踏面が鏡面反射していないためだ。

ここで少し考えた。
「鏡面反射しないということは、表面には極めて微細な旋削痕が残っているためだ。これはこれで落ち着いて見えて好ましい。しかし車重の差を考慮しても、整備されたOゲージのレールでは良いが、ユニトラックのような細かな凹凸のあるレールでは極微細な旋削痕も走行抵抗になり得るのではないか? だとしたら踏面とフランジを研磨すれば走行抵抗をさらに減弱できるのではないか?」
走行音の差まで調べる環境にはないので、今回は「踏面とフランジを研磨したら走行抵抗を減弱できるか」を調べてみた。
当初は液体金属磨きのピカールを使って踏面とフランジを磨いてみた。一応磨けるのだが、いかんせん灯油臭く、布等にすぐ吸収されてしまい効率が悪い。また車輪側面まで研磨されてしまい、メッキ車輪と見た目の差が無くなってしまう。そこでステンレス用の研磨布を使ってみた。また、小さな車輪を保持していると指にマメができたので、旋盤を低速回転で使うことにした。
小さめに切った研磨布を、端をクサビ状に切った割り箸に巻き、チャックの回転に注意しながら車輪踏面とフランジ(特にフィレット部分)に当てた。つや消し状の車輪がみるみるピカピカに輝き、研磨布は黒ずんできた。車輪側面には当てていない。研磨布には研磨剤とワックスが含まれているので、研磨後にティッシュペーパーで拭い落とした。

これなら研磨布の当たる範囲が狭く、使う場所もコントロールできるので研磨布を有効に使える。
(左:研磨前、右:研磨後。下の汚い布は使用後の研磨布)

アップで見る。

「なんだ、いくらLow-D車輪の踏面が滑らかだと言っても、ツヤが無いということはやはりデコボコしてるということじゃないか。いくら磨いたとしても元がデコボコなら市販のメッキ車輪と大して変わらんな…」と思われた方は、以下の写真を見て戴きたい。
・HO用Low-D車輪(未研磨)

・HO用Low-D車輪(踏面・フランジを研磨)

・日光車輪

・KTM・エンドウ車輪

今回の車輪の滑らかさが、何となく御理解戴けよう。
最後に、未研磨のHO用Low-D車輪と比べてどれだけ滑走距離が延びるか(=走行抵抗を減らせるか)を、前回同様KTMの20系客車と5%直線勾配からR610の円を用いて調べてみた。ちなみに室内灯とプラ製床下器具を外した状態で車重はナシ20=202 g、ナハネフ23=205 gであった。
研磨後のHO用Low-D車輪は未研磨の車輪を抜き、R610をほぼ一周した。これはKTM車輪の倍近い。未研磨の車輪が前回の3/4周に僅かに届かなかったのは、台車やボルスタの個体差の範疇と考えている。それでも十分に滑走していることには変わらない。
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< 2021-08-18 追記 >
先端角とタイヤの止め方について質問があったので、車輪の略図を示す。

ピボット先端角は日光車輪を参考に40度とした。車軸にはタイヤを止めるフランジがあり、これでタイヤの振れを抑えている。この辺りは日光車輪と同じ(非絶縁側)だが、車軸中間部分はφ2に細くしてある(日光車輪はφ2.4のずん胴)。絶縁側には樹脂製のフランジ付きブッシュ(赤色)を噛ませている(日光車輪は輪芯に太い絶縁材が嵌め込まれている)。車軸にフランジがあるので日光車輪同様いわゆる“コンコン改軌”は出来ない。輪芯部分の肉抜きは最上段の写真のようにOゲージのLow-D車輪とほぼ相似形である。表裏の肉抜きのお陰で驚くほど軽い。
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コメント
今回作製されたLow-Dの方が市販品よりも踏面の切削痕が少ないのは明らかですね。
また、ピボットの先端はLow-Dの方が市販品よりも尖っているように見えるのは気のせいでしょうか。
ところで、Low-Dの性能とは関係が無いのですが、車輪と車軸を固定する部分の形状が従来の物と異なっていることに興味を持ちました。(特に絶縁側)
どのような構造になっているのでしょうか。
また、ピボットの先端はLow-Dの方が市販品よりも尖っているように見えるのは気のせいでしょうか。
ところで、Low-Dの性能とは関係が無いのですが、車輪と車軸を固定する部分の形状が従来の物と異なっていることに興味を持ちました。(特に絶縁側)
どのような構造になっているのでしょうか。
森井様
HO用Low-D車輪の略図を追記しました。
・ピボット先端角は日光車輪を参考に40度としました。軸受け内側との接触を避けるためです。以前関東合運で日光モデルさんから「ある時期にピボット先端角を45度より鋭角にした」というお話を伺いました。KTM・エンドウ車輪より鋭角に見えるピボット車輪でも45度が採用さているようです。
例1)HOJC/IMONの12 mm用車輪(http://www.hojc.jp/Std/HOJC_STD_20210322.html)
例2)スパイク/13mmゲージ規格検討委員会(http://mkr.on.coocan.jp/wheel_standards.htm)
・車輪と車軸の固定は車軸フランジを付け、絶縁側はフランジ付き絶縁ブッシュを噛ませてあります。
HO用Low-D車輪の略図を追記しました。
・ピボット先端角は日光車輪を参考に40度としました。軸受け内側との接触を避けるためです。以前関東合運で日光モデルさんから「ある時期にピボット先端角を45度より鋭角にした」というお話を伺いました。KTM・エンドウ車輪より鋭角に見えるピボット車輪でも45度が採用さているようです。
例1)HOJC/IMONの12 mm用車輪(http://www.hojc.jp/Std/HOJC_STD_20210322.html)
例2)スパイク/13mmゲージ規格検討委員会(http://mkr.on.coocan.jp/wheel_standards.htm)
・車輪と車軸の固定は車軸フランジを付け、絶縁側はフランジ付き絶縁ブッシュを噛ませてあります。
効果は一目瞭然。ということはLow-D車輪ではなくても研磨すればある程度の効果は期待できそうですね。
モハメイドペーパー様
仮に、走行抵抗が『踏面の粗さによる抵抗<フランジが当たる抵抗』ならば、フランジが当たる(=フィレットRが小さい)車輪は制動状態と言えるので、いくら踏面とフランジを研磨しても効果は薄いと考えます。
研磨の有効性は日光車輪やLow-D車輪のようにフィレットRが大きいからこそだと考えています。というのも急曲線をスムーズに曲がるためには、レールがフィレットに乗った状態(=フランジが当たらない)が有効だったことは証明されました。そのフィレットをさらに研磨することで抵抗が軽減したのだと考えています。
写真のように、日光車輪にも旋削痕があります。しかし転がりが素晴らしいのはフランジが当たらない(フィレットRが大きい)からだと言えましょう。
もちろん、アタック角によって最も抵抗が生じる前方外側車輪のフランジ(フィレット)以外はレールが踏面に乗った状態でしたので、踏面研磨もある程度は寄与していると思われます。
仮に、走行抵抗が『踏面の粗さによる抵抗<フランジが当たる抵抗』ならば、フランジが当たる(=フィレットRが小さい)車輪は制動状態と言えるので、いくら踏面とフランジを研磨しても効果は薄いと考えます。
研磨の有効性は日光車輪やLow-D車輪のようにフィレットRが大きいからこそだと考えています。というのも急曲線をスムーズに曲がるためには、レールがフィレットに乗った状態(=フランジが当たらない)が有効だったことは証明されました。そのフィレットをさらに研磨することで抵抗が軽減したのだと考えています。
写真のように、日光車輪にも旋削痕があります。しかし転がりが素晴らしいのはフランジが当たらない(フィレットRが大きい)からだと言えましょう。
もちろん、アタック角によって最も抵抗が生じる前方外側車輪のフランジ(フィレット)以外はレールが踏面に乗った状態でしたので、踏面研磨もある程度は寄与していると思われます。
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